CL生合成欠損変異株(PGS-S)は、ポリエステル布レプリカ法を用い、CLの生合成前駆体と考えられるホスファチジルグリセロール(PG)の生合成初発反応を触媒するphosphatidylglycerophosphate synthase (PGP synthase)の欠損株として分離することに成功した。平成5年度の研究成果は次の通りである。(1)PGS-S株の形態学的研究;親株とPGS-Sの細胞内構造を電子顕微鏡を用いて解析した結果、非許容温度下で培養したPGS-S細胞のミトコンドリアは野性株のものに比べサイズが著しく大きく、電子密度が低く、クリステも異常であることが判明した。これらの結果から、CLがミトコンドリアの構造・機能に必須であることが強く示唆された。(2)PGS-S株のintact細胞における機能異常;PGS-S株は非許容温度下において以下の性質を示した。:(a)グルコースをガラクトースで置換した培地では増殖しない。(b)ATPの産生が低下する。(c)解糖系の活性増加により乳酸の産生が増加する。(d)酸素消費能が低下する。以上の結果は、先の形態学的観察結果とともに、CLがミトコンドリア機能発現に必須であることが明らかにされた。
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