アルツハイマー痴呆を含む老人性痴呆に、フリーラジカルによる神経系の酸化損傷が関与するものと考えられている。酸素由来のフリーラジカルが、どのように神経系の機能に影響するのか、抗酸化機能がこれを防御しているのかを調べる目的で、ラットを用いて本研究を行った。その結果、以下の結果を得た。 1)酸素由来のフリージカルにより、神経細胞に著しい酸化損傷が認められた。すなわち、アストロサイトの変形、ミトコンドリアの膨潤、核のエキノサイトシスによる変形、シナプスにおける神経伝達物質の異常な蓄積、アセチルコリンの流出低下等を観察した。 2)老化に伴いシナプス膜が過酸化された。酸素暴露したラットでは、過酸化脂質の含量がさらに増加した。 3)シナプス膜を構成する脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸(DHA)が選択的に減少し、活性酸素によりさらに減少した。 4)抗酸化防御系では、ビタミンEが減少し、グルタチオンペルオキシダーゼが増加した。 5)ビタミンE投与によりこのような現象が抑制された。 6)老化に伴い、シナプス膜表面で流動性が低下し、透過性が亢進した。 以上の事実は、活性酸素・フリーラジカルが、神経系に大きなダメージを与え、抗酸化因子がこれを防御していることを示唆している。
|