研究概要 |
1.酸化的ストレスによる抗酸化防御系の変動 酸化的ストレスを与えると(100%酸素環境下で飼育)、神経末端の膜中のビタミンE含量が有意に減少した。酵素群は、グルタチオンペルオキシダーゼ(GSHPX)活性が上昇し、カタラーゼ(CAT)活性も有意に上昇した。一方、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性は、逆に下降した。酸化的ストレスによるこのような抗酸化防御系の変化は、神経末端機能の酸化障害と密接に結びついているものと考えられる。 さらに、大気中で飼育した老齢ラットにおいて、同様の検討をした。老化に伴い、このような変化が、若いラットへ酸化的ストレスをかけた場合と、ほとんど同様な変化が認められた。このことは、老化のフリーラジカル原因説を支持するものと考えられ、興味が持たれる。 2.ビタミンE投与による効果 酸化障害によるシナプス膜透過性の亢進は、ビタミンE投与により強く抑制された。さらに過酸化脂質が減少した。したがって、ビタミンEが、神経末端で活性酸素由来の過酸化障害を防御していることは明らかであろうと思われた。酵素系の変動は、SOD,CATに関しては、上述の酸化的ストレスによる変化を、おさえたが、GSHPXに関しては、酸化ストレスをかけた場合と同じレベルであった。酸化的ストレスをかけないラットに、ビタミンEを投与した場合、SOD,CATは変化しなかったが、GSHPXのみ活性が上昇した。したがって、ビタミンEにGSHPXを誘導する作用があるものと推定された。 3.シナプス内のカルシウム濃度の変化 シナプス内のカルシウム濃度を測定したが、ばらつきが大きく、有意の差が認められなかった。検出感度の低い機器であったためと考えられ、高性能の機器を使用しての、再度の実験を計画中である。また、計画していたカテコールアミンの測定は、行えなかった。
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