研究概要 |
1993年度は研究計画にしたがって、α-アミノ酸を原料とし、ホモキラルなγ-オキシ-またはアジリジノ-α,β-エノエイトを合成し、これらの基質に新しい有機亜鉛・銅アート複合系または有機銅ルイス酸複合系をもちいて高効率的なアルケン・イソスターの合成法の開拓についても検討した。具体的には: 1)有機金属化合物のうち、有機亜鉛と銅(I)化合物から低次及び高次の有機亜鉛・銅(I)複合系試薬を合成し、更に有機亜鉛・銅(I)-ルイス酸複合系試薬試薬をも合成を検討した。その結果、従来の古典的有機銅では、選択的に有機銅のリガンドがトランスファーできなかった基質についても極めて優れた結果が得られることが判明した。 2)上記の有機亜鉛・銅(I)系試薬は極めて安定で、室温下においても長時間活性であり、有機リチウムのみならず、グリニヤー試薬からも合成でき、とくに塩化リチウムを共存させると極めて優れた結果得られることも明らかになった。 3)今日の有機銅系試薬はアルケン・イソスター合成の基質γ-オキシ-α,β-エノエイト系化合物を還元することが多いので、これを抑制する(電子移動を抑制する)条件を有機亜鉛・銅(I)複合系試薬を用いて検討したところ、ほぼ完全に還元反応を抑制することができ、選択的に目的とするリガンドのみをトランスファーできることが判明した。 4)従来の有機銅系試薬を用いると、ビニル系の有機銅系試薬ではリガンドは全くトランスファーされることなく目的とするアルケン系イソスターが得られる。従って、今回、開発を検討する新しい低次及び高次の有機亜鉛・銅(I)複合系試薬をもちいてアルケン・イソスターのうち、メルク、チバ・ガイギー等でも合成が検討されているビニール・グリシン系のイソスターの高選択的合成を検討したところ、ビニル基の導入された新しい型のアルケン・イソスターが合成できることも明らかにした。
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