研究概要 |
1994年度は研究計画にしたがって検討し、以下に記載するような多くの成果が得られた。具体的には: 1.有機金属化合物のうち、有機亜鉛と銅(I)化合物から低次及び高次の有機亜鉛・銅(I)複合系試薬を合成し、更に有機亜鉛・銅(I)-ルイス酸複合系試薬試薬をも合成を検討した。その結果、従来の古典的有機銅では、選択的に有機銅のリガンド、特にビニル基がトランスファーできなかった基質についても極めて優れた結果が得られることが判明した。 2.上記の有機亜鉛・銅(I)系試薬は極めて安定で、室温下においても長時間活性であり、有機リチウムのみならず、グリニヤー試薬からも合成でき、従来反応が進行しない基質についても塩化リチウムを共存させると極めて優れた結果得られることも明らかになった。 3.今日の有機銅系試薬はアルケン・イソスター合成の基質γ-オキシ-α,β-エノエイト系化合物を還元することが多いのでで、これを抑制する(電子移動を抑制する)条件を有機亜鉛・銅(I)複合系試薬を用いて検討したところ、ほぼ完全に還元反応を抑制することができ、選択的に目的とするリガンドのみををトランスファーできることが判明した。 4.アジリジノ-α,β-エノエイトに0価のパラジウム触媒を作用すると極めて興味ある異性化が進行することが判明した.即ち、シス-α,β-エノエイトはトランス-α,β-エノエイトに二重結合が異性化した。また、アジリジン環の置換基は2位と3位がトランスの関係にあるものよりシス関係にある化合物のほうが安定であることも判明した。 5.L-ロイシン-L-ロイシン型、L-ロイシン-D-ロイシン型、L-バリン-L-ロイシン型、及びL-バリン-D-ロイシン型のアルケン・イソスターを立体選択的に合成し、ボンベシン誘導体に組み込んだポリペプチドを合成して、その活性について京都大学医学部と共同研究したところきわめて高いボンベシン・アンタゴニスト活性を有することが明らかとなり、医薬品としての可能性を秘めており、さらに検討する価値が高いことも明らかとなった。
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