リポソームを薬剤カプセルとして応用する際に問題となる標的組織へのリポソームの送達、組織での効率的な薬剤放出について検討した。まず第1に高分子放出型温度感受性リポソームを開発した。リポソームからの薬剤の効率的な放出を目的に、飽和脂質を利用した温度感受性リポソームが開発されている。これは加温によりリポソーム膜脂質の相転移を起こし薬剤を効率的に放出するものである。われわれは温度感受性リポソームの内水相浸透圧を高めることにより、加温により高分子を効率よく放出するリポソームの調製に成功した。つぎにRES(細網内皮系)回避リポソームの癌治療への応用について述べる。本研究の主題である抗体修飾RES回避リポソームによる癌へのアクティブターゲティングについてはうまく行かなかったが、RES回避リポソームの癌へのパッシブターゲティングのみで十分な制癌効果が得られた。RES回避により血中滞留性が上昇すると、リポソームが癌組織など血管透過性の高い組織に集積するため、このリポソームは特に癌診断、癌治療に有効と考えられる。われわれはグルクロン酸修飾によるRES回避リポソームの調製に成功しているので、これを用いて癌治療へ応用できるかどうかについて検討を加えた。制癌剤であるアドリアマイシンを内封したRES回避リポソームを用い、著明な副作用の軽減、腫瘍退縮効果、延命効果を示すことを見いだした。特に複数回の投与により担癌動物の40%が完全治癒しており、その有効性が注目される。また他の制癌剤についても同様の結果を得ており、このRES回避リポソームの臨床応用が期待される。またリポソーム化を前提とした脂溶性プロドラッグの開発と、抗癌への応用も行った。以上本研究により機能性リポソームの実用化へ大きく近づいた。
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