【研究目的】将来いかなる分野で活動するにせよ「合理的な医療の運営」ができる医師になるために、必要な基本的視野、知識、および判断能力を養う卒前教育の手法の確立をめざしている。 【主眼】・ミクロ的視点の教育:---医療の応需、診療記録、処方せんの取扱、患者情報の保護管理とインフォームドコンセントの成立など医療者の持つべきコミュニケーション行動。 ・マクロ的視点の教育:---組織管理・情報管理を主題に、在宅医療、診療・看護連 携、病院組織運営、医薬資材流通、施設間連携など医療資源の効率のよい運営をを認識する。 【実践教育法の改良】従来、全体講義が主流であった方略を改め、臨床実習期間に5名1グループ、2グループ同時独立にフィールドワークを基にしたチュートリアルシステムでの学習法を工夫した。学生は「2010年の理想病院の設計」という想定主題を与えられ、「病院長」「事務長」「看護婦長」「診療科長」「患者」「家族」などの立場に扮して延べ36時間の見学実習、企画、ロールプレイ演習を行った。学生は扮した役割の視点で附属病院の医療管理部門、公的診療所を拠点に、医療運営機構、在宅医療を含む地域医療の実態を見学する。それを基に自分たちが「理想とする病院」「理想的な地域医療体制」のありかたを、各種文献検索をおこないつつ検討する。さらに成果発表と「企画した病院を見学に訪れた患者が受診する」という想定のシミュレーションを行い企画の妥当性、実現性の評価、および医師のとるべき判断、決断についての具体的行動態度についてグループ間討論を行う。 【教育効果の評価】医療の運営管理に関する知識および視野が、実習・演習の前後にどの様な変化が生じたかを分析した。実習前のプレテストでは、学生の関心は病態の診断・治療が主体であり、社会システムとしての医療の視野に乏しかった。実習後に飛躍的に拡大し、教育効果が認められた。
|