研究概要 |
平成5年度ならびに6年度の本研究では,オンライン薬歴情報による副作用監視システム構築とその医療評価への活用に関する研究を行い,その臨床応用の評価ならびに問題点などを検討した。 鹿児島大学医学部附属病院の総合病院情報システムのオンラインデータベースにすでに蓄積している診療情報(患者基本情報,薬歴,臨床検査結果歴,診断病名,診療報酬請求情報など)を,ID番号をキ-にして患者個人ごとに統合し抽出し,これらをもとにパーソナルコンピュータシステムを利用した薬剤疫学データベースの基幹システムを構築した。すなわち,特定した薬剤を投与された患者に対して,その薬剤の投与期間,投与量などの薬歴データとともに,特定した臨床検査項目の投与期間前後の検査結果データを抽出した。具体的には,特定した薬剤(アルベカシン)の投与患者全例を対象にしてシステム分析を行った。すなわち,この薬剤の投与期間,投与量などの薬歴データとともに,臨床検査項目(RBC,WBC,血小板数,好酸球数,GOT,GPT,γ-GTP,BUN,クレアチニンなど)の検査結果データを抽出し分析を続けた。さらに,処方オーダシステムが稼動をはじめた1985年から1994年までの10年間の外来処方オーダデータを抽出し分析した。すなわち,処方データから外来患者の年齢構成,受診診療科数,処方薬剤数,薬効分類別数を解析した。これにより,外来投与薬剤の実状を明らかにし,とくに高齢者への投与薬剤数の増加,併科受診状況などを指摘できた。同様の手法を用いて,入院処方オーダデータを活用し,入院処方薬剤の現状を分析した。 このように病院情報システムに蓄積したオーダデータを活用し,広範囲のデータ処理を可能にする薬剤の疫学データベースを構築し,種々の分析を行うことを可能にした。また,総合的な医薬品副作用監視システムとして迅速かつ正確な活用が可能であることを明らかにし,さらに,薬剤疫学データベースの果たす役割の重要性を確認した。
|