本年度の研究では(1)遺伝性高チロジン血症I型原因遺伝子のクローン化、(2)本疾患での遺伝子変異の解明、(3)本疾患で二次的に障害される4-ヒドロキシフェニルピルビン酸酸化酵素(HPD)の遺伝子構造の解明を達成した。その結果、肝細胞特異的成熟障害をきたす疾患の遺伝子異常を明らかにし、さらに、転写の異常をしめす遺伝子の特徴についての考察も行った。 ヒトフマリルアセト酢酸分解酵素(FAH)遺伝子をクローン化し、その構造を明らかにした。その結果この遺伝子は全長が約40kbで、14個のエキソンから構成されていることが判明した。我が国のFAH欠損症患者由来の培養細胞を用いて、FAH遺伝子の突然変異の解析を行った。その結果アミノ酸置換を伴う点突然変異を見いだした。4-ヒドロキシフェニルピルビン酸酸化酵素の遺伝子構造の解析を行い、HPD遺伝子の大きさは、約30kbで14のエキソンにわかれていて、12番染色体上に位置していることを明らかにした。HPD遺伝子の調節領域の解析から(i)この遺伝子は肝細胞特異的な調節因子に結合する配列を有すること、(ii)この遺伝子は発達特異的な発現に必要な塩基配列を有すること、が明らかになった。さらに高チロジン血症マウス肝臓を用いてmRNAの解析を行ったところ、mRNAではエキソン7が欠損していることを見いだした。そこでこのマウスのHPD遺伝子のエキソン7とその近傍の塩基配列を決定したところ、エキソン7内終止コドンをもたらす点突然変異を見いだした。したがってこのマウスではエキソン内の点突然変異によってエキソンスキップが生じているものと考えられた。 これらの研究によって、本年度の目標にしていた遺伝性高チロジン血症の遺伝子解析を達成し、さらにモデルマウスの解析も終了することが出来た。
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