研究概要 |
申請者はこれまで、狭心症治療薬ニコランジルおよび硝酸イソソルビド、気管支拡張薬テオフィリン、および抗潰瘍薬シメチジンの生体内動態に及ぼす喫煙の影響についてラットを用いて検討してきた。その結果、それら薬物の経口投与時の血中動態は急性タバコ煙の負荷により主に吸収過程に抑制が認められた。今年度は抗てんかん薬のフェノバルビタールおよび同系のプリミドン経口投与時の体内動態に及ぼすタバコ煙の影響について検討した。なお使用したタバコは市販のニコチン・タール量の少ないフロンテアライト(F-L)およびニコチン・タール量の多いロングピース(L-P)で、タバコ煙の負荷にはHanburg II型を使用した。 まずフェノバルビタール(30mg/kg,p.o.)投与実験では、F-L煙負荷群の薬物投与後2時間値,およびL-P煙負荷群において、投与後15分から2時間値において非負荷群に比較して血漿中フェノバルビタール濃度が著明に減少した。その減少の程度はタバコ煙中のニコチン・タール量に比例していた。一方、ニコチン(0.1-0.5mg/kg,s.c.)投与でも、投与量に比例して減少が認められた。 次にプリミドン(50mg/kg,p.o.)投与実験では、タバコL-P煙の負荷で血漿中プリミドン濃度は非負荷群のそれに比較して減少し(Cmaxの低下)、Tmaxが増加した。また代謝物のフェノバルビタールおよびもう一つの代謝物フェニルエチルマロナマイド(PEMA)においても同じであった。一方、ニコチン投与でも同様な結果が得られた。以上の結果、タバコ煙の吸入によりプリミドンの吸収が遅れるためその代謝物の血漿中濃度の低下がみられたと考えられ、その影響はタバコ煙中のニコチンによる可能がある。さらに本研究より、PEMAへのプリミドン代謝はタバコ煙およびニコチンによって影響されないことも明らかになった。
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