これまで申請者は、狭心症治療薬、気管支拡張薬、および抗潰瘍薬の生体内動態に及ぼすタバコ煙の影響について検討して来た。昨年度は抗てんかん薬(フェノバルビタール、プリミドン)の生体動態に対する作用をラットを用いて検討してきた。一方、今年度は消炎鎮痛薬インドメタシンの血中動態に及ぼす影響を、さらに種々薬物の生体内動態へのタバコ煙の影響を裏付けるためにタバコ煙負荷時の腸管輸送能を検討した。 なお、今年度実験で使用したタバコは、市販のロングピ-ス(LP)を使用し、そのタバコ煙の負荷にはHanburgII型喫煙装置を使用した。その負荷時間は8-10分であった。 まず消炎鎮痛剤インドメタシンの生体内動態に及ぼす影響では、インドメタシン5mg/kg経口投与時、LP煙の10分間の負荷で投与後2時間まで非負荷群に比して血中インドメタシン濃度が著明に減少した。一方タバコ煙の構成成分であるニコチンの0.3mg/kg×2回皮下投与時でも、血中インドメタシン濃度の減少が認められた。 次に、今までのタバコ煙の種々薬物動態の変化を裏付けるため、タバコ煙負荷およびニコチン投与時の腸管輸送能を炭末を用いて検討した。LP煙負荷時およびニコチン0.5mg/kg×2回皮下投与時で、炭末腸管輸送能の抑制が認められ、その制御の程度はニコチン投与時の方が大であった。これらのことより、経口投与時のタバコ煙負荷による薬物血中濃度抑制は、腸管輸送能の抑制も一因であることが考えられた。
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