夜間徘徊の動物モデルつまり時刻認知障害の動物モデル作製に努めた。その結果、(1)外界の明暗情報の障害による時刻認知障害の動物モデルの作製できることが解った。(2)老齢動物の運動量、飲水量などのサーカディアンリズムの周期は短くなり、位相変化は弱く、振幅は小さくなった。さらにこのことに呼応して体内時計の視交叉上核神経のニューロン活動のサーカディアンリズムにも異常があることがわかった。(3)社会的同調障害による時刻認知障害の動物モデル。老齢動物に毎日一定時刻に給餌やメタンフェタミン投与行なっても、時刻認知の形成に伴う運動量の増大がこのような老齢モデル動物では障害されていることがわかった。(4)次に時刻認知障害の動物モデルの特性を明らかにしようと試みた。NMDA受容体拮抗薬で給餌制限およびメタンフェタミン投与ラットのいずれの時刻認知も著明に障害されたが、抗コリン薬ではあまり障害が見られず、この点は迷路学習の場合とは異なった。当初に計画していた研究目的、つまり時刻認知の障害モデル動物の作製に成功した。したがって本研究の当初の目的は達成されたと評価できる。さらにこのモデルを使用して、数種の薬物を評価できたことのより、このモデルの有用性がわかった。しかしながら、薬物投与時に問題点が出てきた。つまり薬物を投与すると、時刻認知に伴う運動量の増大のみならず一般的な活動性にも影響を及ぼす場合が見つかった。そこで、operant学習を利用することにした。ラットがレバ-を押すと水がもらえるように訓練して、毎日一定時刻のみレバ-押しにより水が得られるようにすると時刻予知のレバ-押しが完成できることがわかった。いずれにしても抗痴呆薬を始めとする種々の薬物がこの予知行動障害を改善することが明らかとなり、社会的同調の研究に大いに役立つ研究であると思われた。
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