研究概要 |
サブスタンスP(SP)の代謝物の一つであるN-末端フラグメントのSP(1-7)はSP脊髄クモ膜下腔内(i.t.)投与に伴うscratching,bitingおよびlicking(SBL)行動を極めて低用量を投与することにより抑制する。そこで、SP(1-7)のD-体アミノ酸置換ペプチドを合成し、SP拮抗作用についての検討を行った。SP誘発性SBL行動に対して[D-Arg^1]SP(1-7),[D-Arg^1,D-Pro^2]SP(1-7),[D-Arg^1,D-Trp^7]SP(1-7)および[Tyr^0,D-Arg^1,D-Pro^<2,4>]SP(1-7)はSP(1-7)とほぼ同様な活性を示した。また、化学的侵害刺激のカプサイシンをマウスの足蹠内へ投与すると投与部位に対するlicking行動を示すが、SP(1-7)をi.t.投与すると2〜64pmolの用量範囲内で有意な抑制作用を示した。しかし、完全な坑侵害刺激効果は認められなかった。同様な効果が上記のSP(1-7)アナログについても認められた。一方、SPをi.t.投与した際と同様なSBL行動が興奮性アミノ酸(EAA)受容体アゴニストのNMDA,カイニン酸およびAMPAによっても出現し、これらの行動はSP(1-7)投与により有意に低下した。次に、SP(1-7)の作用機序を解明する目的で一酸化窒素(NO)の関与を検討した。SP誘発性SBL行動に対するSP(1-7)の抑制効果はNO供与物質のL-アルギニン投与により変化を示さなかった。同様にEAA受容体アゴニストに対するSP(1-7)の抑制効果はL-アルギニンの投与により無影響であった。しかし、cyclic-GMP生成酵素阻害剤のメチレンブルー投与によりSP(1-7)の効果は消失した。また、このメチレンブルーの効果はcyclic-GMP投与により回復した。従って、SP(1-7)はcyclic-GMPを増加することにより作用を示すものと考えられるが、この増加はNO系を介するものではないことが示唆された。
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