近年 欧米諸国では、心臓や肝臓などの臓器移植がさかんに行われるようになり、数多くの生命が救われている。これは移植技術の進歩とともに、新しい免疫抑制薬や抗生部質の出現に負うところが大である。一方、術後に用いる薬物によって新たな問題が生じ、そのために使用を中止せざるを得ないことがある。例えば、移植後の患者に対してcyclosporin A(免疫抑制薬)はほぼ全例に、またamikacin(抗生物質)は感染症を合併したときによく用いられる、これはともに腎機能傷害をきたし、腎不全状態をもたらすことがある。従って、これら薬物を用いる場合には腎機能傷害を防止することが必要であるが、いまだ有効な防止法はない。 今回の研究ではsinorphan(ANP分解酵素阻害薬)をラットに反復投与し、cyclosporin Aやamikacinによる腎機能傷害が防止できるか否かを検討した。amikacin(250mg/kg・day)あるいはcyclosporin A(50mg・day)を反復投与(14日)したところ腎機能傷害が生じ、Clcrの低下、尿中NAG排泄量の増加およびPRA高値を認めた。また組織学的にも腎尿細管上皮細胞の壊死および脱落を認めた。しかし、sinorphan(50mg/kg・day)の併用により、amikacinやcyclosporin Aによる腎機能障害は著明に改善し、また組織学的にもsinorphanの腎保護作用が明らかなった。 以上の成績より、amikacinやcyclosporin Aに伴う腎機能障害の発症がsinorphan併用により防止できることが示唆された。
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