キニンの尿中・血中分解経路をHPLCで分析し、新規キニナーゼ阻害薬を見出した。ラット血中あるいは炎症巣でのキニン分解はキニナーゼI・IIで全て説明でき、キニナーゼIIが優位(全活性の75%)であり、これはアンギオテンシン変換酵素阻害薬のカプトプリルで阻害される。これに対し、尿中ではキニナーゼI・IIの関与はすくなく(全活性の15%以下)、neutral endopeptidase(NEP)の関与も全活性の45%以下である。尿中キニナーゼによるキニンの分解経路は極めて特殊で、従来報告のあるキニナーゼと異なり、Carboxypeptidase Y-like(CPY)のキニナーゼが存在し、これが総活性の半ば以上になった。尿中キニナーゼ阻害薬をスクリーニングしたところ、post proline cleaving enzyme阻害薬として報告のあるpoststatinが、NEPおよびCPYの両者を阻害し、ebelactone Bが、CPYを強く阻害することが判明した。またebelactone Bの阻害特異性は高く、膵臓由来のCarboxypeptidase AおよびBに対しては阻害活性を全く示さなかった。生理的食塩水を静脈内に負荷した、麻酔下のSD系ラットに、poststatinおよびebelactone Bを、投与すると尿量の増大、尿中ナトリウム排泄量の増大をみとめた。キニンの尿中排泄増大が同時に起き、この増大したキニンが尿量・尿中ナトリウム排泄増大を起こしていることが、キニン拮抗薬の同時投与で明らかにされた。さらにpoststatinおよびebelactone Bを、DOCA-salt高血圧ラットに投与し血圧への効果を調べた。アンギオテンシン変換酵素阻害薬のカプトプリルあるいはリジノプリルは、キニン系正常ラットのB/N-Kiラットおよびキニン系欠損ラットのB/N-Kaラットの両者に全く無効であったが、poststatinおよびebelactone Bは正常のB/N-Kiラットにのみ降圧作用を認めた。これは尿中ナトリウムの排泄増大と髄液中のナトリウム濃度の低下を伴っており、降圧利尿薬となる可能性が示唆された。
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