本研究では、虚血再灌流により活性化した多形核白血球(PMN)の血管弛緩反応に及ぼす影響について検討した。 ラット腹部大動脈を用いた収縮弛緩反応測定およびラット腹部大動脈の虚血再灌流モデル確立した。弛緩活性は、腹部大動脈を幅約5mm切り開きトランスバースストリップ標本を作製し、これをマグヌスバスに装着した。静止張力1gを負荷し、血管反応をFDピックアップを介して等尺性の張力変化を記録した。フェニレフリン10^<-5>Mにて予め収縮させ、アセチルコリン10^<-5>Mによる弛緩反応を観察した。また、虚血再灌流は、ラット麻酔下で露クレンメで血流を遮断し再開することにより行った。虚血時間は、30分、60分および120分、再灌流は、5、15、30、45および60分とした。 その結果、虚血直後の弛緩活性は、60分以上の虚血により弛緩活性は減弱された。また、30分の虚血後、5および15分の再灌流により、弛緩反応が抑制された。さらに再灌流を継続することにより対照値まで回復した。60分の虚血後、強く抑制された弛緩反応は、再灌流を継続することにより60分で50%まで回復した。また、虚血再灌流による弛緩活性の抑制は、白血球接着分子の抗体処置により抑制された。さらに、抑制された弛緩活性は、L-arginineの添加により回復した。 これらのことから、大動脈における虚血再灌流において、短時間の虚血後で認められる弛緩反応の抑制は可逆的であり、活性化された白血球の接着により内皮細胞機能が一時的な活性酸素障害を受けたためと思われる。NO産生阻害は、基質であるL-ariginineの供給減少による可能性が考えられた。
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