喘息時の気道過敏性と炎症との関連を追求する目的で、オゾン誘発気道過敏性(O_3-AHR)におけるキニンおよびタキキニンの関与を検討した。実験にはHartley系雄性モルモットを用いた。オゾンは無麻酔下に 3ppmの濃度を30分間暴露した。その後、麻酔下にacetylcholine(ACh)を静脈内投与した際の肺抵抗(R_L)をAmdur & Meadの方法により測定し、気道反応性を評価した。オゾンの曝露によってAChに対するR_Lが増強し、気道過敏性が誘発された。このO_3-AHR時には、血漿kallikreinおよび気管支肺胞洗浄液中の腺性kallikrein活性が上昇しており、また、単独では気道収縮を起こさない用量のbradykininおよびkallidin(KD)を接続投与した結果、AChに対する気道過敏性が発現したことから、O_3-AHRにおけるキニンの関与が示唆された。O_3-AHRはcapsaicinの前処置でタキキニンを枯渇することにより抑制され、NEP阻害薬であるphosphoramidonで増強された。また、単独では気道収縮を起こさない用量のsubstance P(SP)およびneurokinin Aの持続投与により AChに対する気道過敏性が発現した。さらに、O_3-AHRはタキキニン拮抗薬であるFK224により有意に抑制された。したがって、O_3-AHRにおけるタキキニンの関与が示唆された。次に、キニンとタキキニンの関連を検討した結果、KD誘発気道過敏性は、capsaicinの前処置により消失した。また、FK224は、KD誘発による気道過敏性も抑制した。以上のことから、O_3-AHRにおいてキニンはタキキニンを介して気道過敏性を発現することが考えられた。一方、摘出気管支標本を用いた検討において、フィールド電気刺激により誘発した非コリン作動性収縮はオゾン曝露群で増強が認められたが、外因性に投与した SP の収縮反応はオゾン曝露で影響されなかった。したがって、オゾン曝露により非コリン作動性神経末端からのタキキニン遊離が増強されることが示唆される。
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