研究概要 |
平成5年度において改良した散乱光を用いる血小板凝集計を使用して,平成6年度では次のような検討が行われた。 1.種々の刺激剤による健常人の血小板凝集能を判定し,正常値を求めた。年齢,性別による評価を行い,高齢者,女性の値がより高いことを確認した。 2.末梢血血小板数,乳糜血漿など血小板凝集に影響を与える因子を考慮し,散乱光を用いた血小板凝集能測定の標準化をはかった。血小板数は,10^4cells/μlまでの低値でも測定が可能であり,これまでは不可能であった血小板数の減少している患者においても血小板機能の判定が可能となった。また,乳糜の状態が強い検体,また実験的にリポ蛋白を加えた症例でも、正確に血小板凝集の測定が可能であることが示され,この測定装置の臨床的な応用は広いことが示唆された。 3.従来の光透過性を用いた血小板機能測定法では検出不可能であった自然凝集が,本法では鋭敏に検出できることがわかった。自然凝集は,糖尿病,脳血栓症などの血管病変を有する疾患で有意に高値をとり,特に糖尿病では,神経伝導速度,網膜病変の進展と,自然凝集の出現が高い相関を示すことが明らかになった。これらの検討により散乱光を用いた血小板機能測定法が,臨床上有意義な情報を与えることが示唆された。 4.本法は,小凝集塊の形成,大凝集塊の形成を区別して測定,定量的に判定することが可能であり,薬剤の血小板機能に対する作用機序を判定する上で非常に有用であることが示された。すなわち,アスピリンや最近注目されている一酸化窒素などの血小板機能に対する機序が異なり,これらの薬剤の相乗作用が期待できることが明らかになった。
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