3種の乳酸脱水素酵素(LDH)Aサブユニット欠損マウスおよび正常対照のマウスからDNAを抽出し、遺伝子解析の試料とした。既知の塩基配列から各エクソンをはさんだイントロン領域にPCR用プライマーを合成し、PCRによってエクソン-イントロンジャンクションを含んだ各エクソン領域を増幅した。アガロースゲル電気泳動の結果、いずれのエクソン領域も完全に増幅され、長さにも異常がなかったため、遺伝子の大きな欠落・挿入はないものと考えられた。また、イントロン領域の大きな異常がないかについても調べたが、異常は認められなかった。そこで、PCR増幅した各フラグメントをsingle strand conformation polymorphism(SSCP)分析によって、異常部位のスクリーニングを行ったところ、明かな異常は認められなかったので、全エクソンの塩基配列決定によって確認中である。もし、全エクソン領域に異常がみられない場合、プロモーター領域の異常が疑われるため、2年目はそれが主な作業となる可能性がある。表現型としてLDH活性が欠損しているヒトとマウスであるが、遺伝子変異は明らかに異なった種類のものがある可能性があり、興味深い所見である。一方では、ヒトのLDHの遺伝性変異の個体からDNAを抽出し、ヒトにおける遺伝子異常の解析を進めた。構造遺伝子に点変異や小さな欠落や挿入などいくつかの遺伝子異常を見いだし、遺伝型の多様性を認めた。 このような遺伝子異常を簡便にスクリーニングする方法としてSSCP分析を活用したが、その方法論の改良化、確立のためにLDHおよびコリンエステラーゼ遺伝子を用いて検討した結果、SDSを泳動バッファーに添加すると、判別が容易になる場合が多いことが判明した。
|