3種の乳酸脱水素酵素(LDH)Aサブユニット欠損マウスおよび正常対象のマウスから抽出したDNAを資料として、各エクソン領域をPCR-SSCP分析を行ったが、明かな異常は認められなかった。従って、エクソンおよびエクソン-イントロンジャンクションを全て塩基配列を決定した。3種のAサブユニット欠損マウスに点変異が認められたが、正常対照マウスにも認められ、単なる遺伝子多型と考えられた。従って、欠損の原因となりうるに有意な遺伝子異常は現時点で検出されていない。プロモーターの解析については、その途上であり未だ有効な結果は認めていない。 一方では、ヒトのLDH-Aサブユニット欠損症の本邦第7家系目が福岡県で報告された。臨床的には今までに明らかとした筋症状や皮膚症状の発現が弱かった。遺伝子解析を施行したところ、未知の変異であることが判明し、塩基配列決定によりコドン171番におけるCCA(Arg)からTGA(Stop)へのナンセンス変異であると同定された。すなわち、点変異のホットスポットであるCpG dinucleotidesにおけるtransitionであった。基質結合ドメインの途中における未熟翻訳終了であるため、欠損症の原因遺伝子として妥当であると考えられた。 以上の症例の遺伝子解析を含め、ヒトLDH-Aサブユニットにおける遺伝子異常は、総数18遺伝子座位を解析した結果、点変異が4種、欠落/重複変異が3種、スプライシング異常が0種と計7種の変異が見いだされた。3種のAサブユニット欠損マウスの解析によって、いずれもエクソン、エクソン-イントロンジャンクションに異常が認められないのはヒトにおける遺伝子異常とかなり態度を異にすると推定された。
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