1)遺伝子導入によるHTC/C3細胞の分化 TSH-Rを欠如しているHTC/C3細胞にTSH-R遺伝子の導入を行った。neoを用いて選択し樹立した3クローンについてTSHの投与下でのcAMP産生を観察したが、有意の反応は認められなかった。これは、CHO細胞などでも観察されている現象と一致し、TSH-Rの細胞膜へのインサートが不完全なためか、叉は発現コピー数が少ないためと理解される。再度遺伝子を導入し高濃度のG418存在下で長期間選択して、目的にかなったクローン(TSHに対して十分なcAMPの産生反応を示す株)の樹立を試みる。続いてTSH添加に伴うhTgの産生の変化の有無を観察する予定である。 2)甲状腺癌特異的モノクローナル抗体TCM-9の認識抗原 バセドウ病甲状腺組織から分離精製したhTgを還元剤処理することで抗原性が出現することが判明した。HTC/C3内の抗原産生量が極めて低下していることが判明したため、現在再クローニングを行っている。 3)HTC/C3とラット甲状腺株化細胞FRTL-5の融合細胞を用いた解析 FRTL-5はTSH-Rを有し、TSHの添加によってcAMPの産生が誘導されると共にラットTg(rTg)の産生、ヨードの細胞内への取り込みなどを生じるが、甲状腺ホルモンの産生はない。HTC/C3培養液中にはhTgは検出されなかった。HVJ(センダイウィルス)を用いて両者を融合し、細胞外液内のhTg、rTg量を測定した。混合培養及びTSHの非存在下で培養した融合細胞ではhTgの産生は検出されなかった。しかし融合細胞にTSHを添加した系では、融合後6日後から少量のhTgの産生が観察された。その産生量の増減はrTgの産生量と良く並行していた。
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