1)遺伝子導入によるHTC/C3細胞の分化 TSH-Rを欠如しているHTC/C3細胞にTSH-R遺伝子の導入を行った。neoを用いて選択し樹立したクローンについてTSHの投与下でのcAMP産生を観察した。昨年度は有意な反応を示すクローンが得られなかったが、再度の細胞のクローニングにおいてTSHに反応性を示す複数のクローンが得られた。しかし、これらはTSHの添加の有無の如何に関わらず、抗体によって検出されるレベルのThyroglobulin(Tg)の産生は認められなかった。また、ヨードイオンの取り込み活性も発現されなかった。これらのクローン及びホスト細胞について、引き続き正常p53遺伝子の導入を行い、これらの分化形質の発現の有無を検索中である。観察として、p53発現細胞の増殖が抑制される可能性を認めており、仮に分化形質を誘導できたとしても株化細胞としての樹立には問題があるかもしれない。その対策として、transient gene expressionのレベルで細胞の形質観察を行う必要があるかもしれない。 2)甲状腺癌特異的モノクローナル抗体TCM-9の認識抗原 HTC/C3に認められている甲状腺癌特異抗原の存在の有無を8種類の樹立ヒト甲状腺癌細胞(未分化癌、低分化癌)で検討した。6株に存在が認められ、特に抗原が大量に含有していると思われるSW579から抗原を精製中である。TCM-9を用いた定量系の作成を試み、可能ならその発言量が甲状腺の分化度を示すマーカーの一つとなる可能性がないか否かについての検討を加える。
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