本年度は前年度にほぼ完成したホスホリパーゼDとコリンオキシダーゼを用いたカルシウムの酵素的分析法を更に発展させて、2つの酵素を同時固定化してバイオリアクターカラムを作製し、酵素反応により生成された過酸化水素の高感度検出のために化学発光法を用いた。その結果、試料1μl当たり10pmolの過酸化水素を検出することができた。 本年度はその他に、酵素を試薬とする生体液特に血清中亜鉛の高い特異性をもった高感度分析法の開発に関する研究も行った。本分析法の測定原理は、亜鉛酵素であるアルカリ性ホスファターゼやアルコール脱水素酵素からキレート剤などを用いて亜鉛が除去されたアポ酵素を酵素試薬とし、その試薬に亜鉛を含んだ試料を添加し、亜鉛酵素の活性が回復する度合いを測定することにより、試料中の亜鉛濃度を求めようとするものである。亜鉛測定に使用可能な亜鉛酵素としては、血清中にほとんど存在せず、その活性測定が容易で、かつ容易に入手できる酵素が望ましい。この条件に合致する酵素としてアルコール脱水素酵素がある。しかし、亜鉛が除去されたアポアルコール脱水素酵素に亜鉛を添加しても酵素活性は回復しなかった。これに対して、アルカリ性ホスファターゼはキレート剤などで亜鉛を除去した後、それに亜鉛溶液を加えると亜鉛濃度に比例して、アルカリ性ホスファターゼの活性が回復した。しかし、血清の場合には、アポアルカリ性ホスファターゼ試薬を用いて得られた亜鉛濃度と原子吸光分光光度法による結果とは相関しなっかた。 サーモリシンは1分子に亜鉛が1個存在し、その亜鉛はキレート剤などにより容易に除去できたが、サーモシリンはプロテアーゼであるので、その活性測定に問題があり、組成が明確な基質が必要である。
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