研究概要 |
RAG-1遺伝子発現の検出のために逆転写PCR(DNA重合酵素連鎖反応)のシステムを株細胞で確立した。(「PCR法によるRAG-1遺伝子の検索」医学のあゆみ:157巻709頁、1991年)。株細胞の個数を31種類まで増やして検討した結果、未分化白血球/リンパ腫由来の株細胞で発現を認め、末梢段階由来のものやHodgkin株細胞では活性を認めず、RT-PCRで検出しているRAG-1について予想された分布であり有意性を確認した。そして新鮮リンパ腫/白血病材料45症例について検討を加えた。B-lineageでは、最も未分化な段階(Reinherzの分化段階分類の第2期)から十分量の発現を認め、第3期に最高に達し、第4期以降では減弱して、成熟B細胞の段階以降は、RAG-1の発現を認めなかった。T-lineageでは、前胸腺段階(CD7+ CD5- CD2-,CD7+ CD5+ CD2-、CD7+ CD5+ CD2+ CD3- CD4- CD8-)では、RAAG-1発現は陰性か極めて限られ、胸腺段階で非常に強い発現を示し、それ以降の分化段階では減弱し、末梢段階由来の腫瘍ではRAG-1発現を認めなかった(Blood 82:207-216,1993)。T細胞受容体のδ鎖やγ鎖の遺伝子再構成は、前胸腺段階でも起こっていて、そもそも遺伝子破壊マウスの実験結果からは、T細胞受容体のβ鎖遺伝子再構成だけでなく、δ鎖やγ鎖の遺伝子再構成についてもRAG-1発現は必須とされている。RAG-1発現が前胸腺段階では陰性か限られた程度にしか発現のないという我々の研究の結果は、これら遺伝子破壊マウスの研究結果と異なっていて、今後の展開が注目される。我々は、遺伝子破壊マウスでT細胞受容体δ鎖やγ鎖の遺伝子再構成が全く起こっていないという検索が十分でない可能性がかなり、我々の臨床材料の多数例の結果の方が正しい可能性がかなりあると予測している。
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