研究概要 |
前年度に株細胞や新鮮腫瘍細胞について、B系統では、CD19+10-20-及びCD19+10+20-段階で強い発現があり、CD19+10+20+の段階まで成熟すると弱い程度にしか発現が認められないことを見いだした。又、T系統では、CD7+5-2-,CD7+5+2-,CD7+5+2+3-4-8-,などの前胸腺段階では、RAG-1発現は認められず、胸腺段階(CD3±CD4+8+)では、強い発現が認められ、CD3+4+8-の段階では減弱することを見いだした。一般に、前胸腺段階では、T細胞受容体遺伝子の再構成について、δ鎖やγ鎖までしか再構成は進んでおらず、β鎖遺伝子は胚細胞型のままであり、胸腺段階に至って初めて、β鎖遺伝子の再構成が起こる。実際に検索した材料について、T細胞受容体のδ鎖、γ鎖更にβ鎖の単クローン性再構成を検索し、これを確認した。例外的に、CD7+5+2-の前胸腺段階でβ鎖遺伝子の単クローン性再構成が起こっていた例では、RAG-1が検出された。従って、今回の研究の結論の、(1)造血器腫瘍細胞のRAG-1発現は、由来の分化段階に応じて維持されていて、造血細胞分化地図作製上、RAG-1のような形質についても腫瘍細胞が有用らしいこと、(2)RAG-1のT細胞受容体遺伝子再構成への関与は、β鎖の場合と異なり、δ鎖やγ鎖については、少なくとも量的に限られているらしいこと、は確認された。次に、CD7+5+2-の前胸腺段階由来と思われる株細胞(Kasumi-3)をIL-7存在下で培養し、元来は検出されないRAG-1が検出されるようになるかどうか、検討した。IL-7存在下でも、RAG-1発現は誘導されず、この株細胞にRAG-1発現を誘導するのにはその他の液性因子について研究する必要のあることが分かった。
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