研究概要 |
α1マイクログロブリン(α1-m)は分子量約3万ダルトンの蛋白で主に肝臓で産生されている。炎症のモデルとして手術、悪性腫瘍をIgA増加症患として症患活動性の高い異常構造蛋白α鎖病をモデルに、動態変化の機序の解明を試み以下の成果を得た。 1)手術前後における動態分析 変動の主体は分子量30kDaの低分子型α1-mであり、手術侵襲度に応じて変動はバラツキがあるが、基本的には術直後から増加をきたすことから、臨床的な知見からは、α1-mは陽性急性相反応物質に属する蛋白と推定される。α1-mは低分子であり、急速に腎からクリア-されると考えられ、この異化能を上まわる産生の増加がもたらされる高度の侵襲病態によってのみ、急性相反応物質としての動態変化が捕えられたと考えられる。 2)α鎖病におけるα1-mの構造存在様式の解明 正常血清ではその約半分はIgA単量体と結合存在するが、α鎖病患者では低分子型のα1-mはほとんど存在せず、ほとんど全てがα鎖と1:1モル比で共有結合した高分子型であることをゲルろ過法、Western blotting法により示した。免疫組織染色ではα鎖産生細胞にはα1-mが局在せず、肝で産生分泌された後、産生部位は不明であるが、IgAと結合すると推定される。 3)血清アミロイドA,α1-m微量測定法の開発 この研究の過程で急性相反応物質(APR)の一つである血清アミロイドAのラテックス凝集反応による測定法を共同で開発、測定の基礎検討、基準範囲を設定した。 4)α1-m産生の機序の解明の試み 肝癌細胞株(cCH4)を用いてIL-6の及ぼす効果について検討した。IL-6を添加したところ、上清中のα1-m濃度は低下し、実際の臨床データと矛盾する結果であったα1-mのcDNAを現在作製しており,サイトカインのα1-m産生作用機序の解明が今後の課題として残されている。
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