研究概要 |
癌化に伴い細胞膜上の蛋白,糖脂質などの性質,発現量が変化するが,補体の活性化を調節する補体制御因子についても癌化に伴う変化が認められている.申請者らは、補体制御因子のうちPIアンカー型蛋白であるDAF,CD59がある種のヒト培養細胞株で選択的に欠損することを明らかにしてきた.本研究ではこの欠損のメカニズムを明らかにすることを目的としている. 5年度は,DAF,CD59の発現レベルをヒト白血病培養細胞株でさらに広範囲に検索し,DAF単独欠損株(CEM),CD59単独欠損株(U937),DAF,CD59両欠損株(Ramos(+),TALL)の4種の欠損株を得た.これらがどのレベルで発現の調節を受けているのかを明らかにするためにNorthern hybridizationによりmRNAの発現レベルを検討した.コントロールの非欠損株でDAF probeは2.6,2.0Kbpのバンドを検出したがCEM,TALLではバンドは認められなかった.CD59 probeは非欠損株では2.2,1.7,1.1Kbpのバンドを検出したが欠損株のU937,TALLでは認められなかった.一方,Ramos(-)では両蛋白が欠損しているのに係わらず,DAF,CD59のmRNAは正常に発現していた.mRNAの発現の有無はRT-PCRによる検討でも各細胞株で同様であった.これらの結果は,白血病細胞株ではDAF,CD59欠損のメカニズムは多様であることを示している.発作性夜間血色素尿症(PNH)では個々の患者によらず,全ての症例でGPIアンカーの合成に関与するPIG-Aといわれる因子に異常が認められるのとは対照的である.Ramos(-)ではmRNAが検出されたためPNHと同様GPIアンカーの合成の異常である可能性が高い.他の欠損株ではDAF,あるいはCD59の蛋白部転写以前に変異があることが明かとなった.
|