研究概要 |
細胞の癌化は、膜上の蛋白質・糖脂質などの性質、あるいは発現量の変化を伴う。申請者らは、補体制御因子のうち、GPI-アンカー型蛋白質であるDAF(CD55)およびCD59が、ある種のヒト腫瘍培養細胞株で選択的に欠失していることを報告した。5年度、6年度では欠損株4種での欠失の機序を検討し、3種では蛋白部合成の変異であることを明らかにした。一方、1株では、発作性夜間血色素尿症と同様GPI-アンカー部の合成異常であることを明らかにした。近年、GPI-アンカー型蛋白質を刺激するとT細胞や好中球の活性化を誘導することが明らかにされ、これにsrc系のチロシンキナーゼが関与することが報告されている。しかしながら,GPI-アンカー型蛋白質は細胞内ドメインをもたず、どのようにして細胞内に存在するチロシンキナーゼと相互作用するのかは不明で、多くの研究者により両者と相互作用するtransducer分子の存在が想定されている。GPI-アンカー型蛋白質はcaveolaeと呼ばれる細胞膜構造に存在することが報告されており、現在、この部位の主要膜貫通型蛋白質であるcaveolinがtransducer分子として有力視されている。7年度はGPI-アンカー型補体制御因子、特にCD59のシグナル伝達機構を明らかにすることを目的として、caveolinとの相互関係について1.Western blottingによる可溶化画分での分布、2.蛍光染色による分布を比較した。また架橋試薬によるassociation蛋白質の検索を行った。HeLa, CHO/CD59をDTSSPで架橋後可溶化し、抗CD59抗体でWestern blotting解析した結果、分子量13-18 kDaの分子がCD59とassociateしていることが判明した。クロスリンクされてくる分子は、caveolinの分子量(21-22kDa)とは異なっており、CD59は本研究の条件下ではcaveolinとassociateしていないことが判明した。1、2の結果もこれを支持した。現在クロスリンクしてくる分子について検討中である。
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