本研究は現在看護職が抱えている問題の根本原因を追求し、その問題の解決あるいは看護ケアシステムの改善のためには何を目指せばよいのかを、看護ケアシステムの特性とあるべき姿を看護本来の役割・機能を追求することにより明らかにした。そして現在の看護ケアシステムの問題は看護職の職務内容の不明確さと曖昧さに起因していると考え、先に求めた看護の独自な機能から看護本来の業務を明らかにし、これを実際の病棟の看護業務調査の結果と看護業務分類に当てはめ分析を試みた。そして現行の看護業務の中にどのくらいの看護本来の業務が存在するのか、あるいは他の医療職へ委譲した方が望ましい業務がどのくらいあるのかを抽出し、現行の看護業務の再構築を試みた。 その結果、現行の病棟の看護業務の中にはその業務の専門性から考えても、他の医療職に委譲できるまた委譲した方が望ましい業務がかなり存在していることが明らかになった。各職種の法的位置づけを確認しながら、どの業務を、どの時間帯に、どの職種に委譲すれば公立的でかつ経済的にもメリットがあるかを試算した。その結果、現時点でも最も望ましい委譲方法は、業務の時間依存性や集積性、発生頻度から考えて、ある一定時間内にある特定の職種に委譲してゆく方法が最も現実的かつ経済的であることが分かった。また委譲にはその医療従事者の病棟内での活動に診療報酬などの経済的な裏付けがない場合がほとんどであるため、まず無資格者に可能な業務を委譲して行くのが得策である。また医療界全体のマンパワー不足の状況の中で、看護職がその専門性を発揮した本来の業務を行うには、委譲される側の職種の業務の見直しも同時に行い、患者を中心にした医療チームのそれぞれの専門性に応じた役割と業務の再検討が相互理解・協力の元になされる必要がある。
|