研究概要 |
腰椎手術後患者の術後合併症の腸管麻痺を予防する方法とその影響する因子を明らかにすることを目的に,京都私立病院において16カ月間に腰椎の手術を受けた患者103名を対象に年齢,性別,手術式,手術時間,術前日の浣腸有無,腸雑音時間(開始),排ガス時間(開始),術後鎮痛剤の有無,排ガスの処置による排ガス時間について調べ検討した。 対象の平均年齢は48.6歳であり,男性は57.1%,女性は42.9%であった、腸雑音時間は6.2時間,排ガス時間は20.6時間であった。年齢と腸雑音時間・排ガス時間との関係をみると、年齢が増すにごとに開始時間が遅くなるが,有意差はなかった。手術式と排ガス時間との関係をみると、腰椎前方固定術が他の術式に比べ遅かった。手術時間との腸雑音時間・排ガス時間との関係をみると,1時間以内の手術の場合は腸雑音時間2.9時間と非常に速いが,排ガス時間は21.3時間と3時間の手術の場合と有意な差はなかった。術後の鎮痛剤の使用は、ボルタレン坐薬が55.3%,ペンタジン15mgが13.6%,ペンタジン15mgとアタラックスP25mgの混合が11.2%であった。鎮痛剤の使用と腸雑音時間・排ガス時間との関係をみると,排ガス時間に有意差はないが,腸雑音時間ではペンタジン15mgとアタラックスP25mgの混合が11.2時間と一番遅く,ポリタレン坐薬・ペンタジン15mgの約5時間の2倍遅いことがわかった。手術前日のグリセリン浣腸有無と腸雑音時間・排ガス時間との関係をみると、前日に浣腸をしない方が腸雑音時間・排ガス時間が少し速いが,有意差はなかった。術後の排ガス処理による排ガス時間をみると,ガス抜きをした場合が25.2時間,浣腸をした場合が21.7時間と浣腸の方が腸管運動の回復を促していることがわかった。 本調査により,腰椎手術後患者の腸管運動を促進するには,術後の鎮痛剤の使用時にアタラックPを使用しない方がよいことが示唆された。
|