研究概要 |
平成5年度までは,老人病院の長期入院患者および医療従事者の鼻腔および手掌からMRSAが頻繁に検出された。また,病室・ナ-スステーションおよび廊下などの環境もMRSAに汚染されていた。これらの結果を参考にして,医療従事者の手洗いの励行とMRSA感染者および保菌者の隔離を行い,看護業務および消毒・清掃法の一部を次のように変更した。(1)看護業務を非保菌者から保菌者に流れるようにする。(2)病棟を保菌者群と非保菌者群に区分し,看護に必要な機材・器具類も区別する。(3)看護処置で手袋を使用する場合は各患者ごとに交換する。(4)医療器具類の消毒・滅菌を完全に行う。(5)廊下等の清掃は消毒液で行う。これらの内容を徹底的に実践しながら以下の検査を行い,変更前と比較した。 1.入院患者約50名および病棟勤務者の手掌および鼻腔のMRSA汚染状況を検査した。その結果,患者からのMRSA分離率は,鼻腔からは24%から21%に,手掌からは22%から6%に減少した。また,病棟勤務者からのMRSA分離率は,手洗い後では一般細菌数もMRSAも減少あるいは皆無となった。しかし,鼻腔内からは低率ながらMRSAが検出された。 2.病棟内の病室の床おび廊下の約100箇所を検査した結果,MRSA分離率は9%前後で清掃方法の変更前と全く同じであった。 これらの結果を基にして,看護業務のさらなる改善(手洗いの励行・MRSA保有患者の隔離・各病室専用の機材・器具類の設置など)および消毒剤による環境の清掃化を徹底的に行っている。さらに,病室・環境の検査を3〜4か月毎に行い,季節によるMRSA汚染状況を把握し,老人病院に適したマニュアルの完成を目指している。
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