研究概要 |
街路空間イメージの形成に街路の音評価が少なからず影響する事実に着目し,街路の音環境を含めた空間評価と対象者の日常的音環境・音に対する意識とのかかわりに関する検討を目的とし,心理実験および自記式質問紙による調査を行った。心理実験は,盛岡市の街路スライドの提示による空間イメージ実験,および車の走行音・人込みの音・緑の中の音に関する想起音実験の2種であり,7段階評価のSD法を用いた。自記式質問紙法調査の項目は,被験者の属性・生育環境における音環境・現居住地における日常的音環境に関する主観的評価などである。被験者は岩手大学学生97名である。 得られた結果は以下に要約される。 1. 因子分析の結果,街路空間イメージでは快適性,活動性,親密性の3因子,想起音イメージでは価値,喧騒,力量の3因子が抽出された。 2. スライドにおける音想起対象の有無による空間イメージの変化量を分析軸とし,想起音の因子得点と変化量との相関係数を算出した結果,いずれの音においても喧騒因子が空間イメージの変化に大きくかかわることが明らかとなった。 3. 緑の中の音としての静けさに関しては,緑に囲まれた住宅街の音に喧騒を感じる人ほど音想起対象の存在による快適性の絶対差が小さくなる傾向が認められた。 4. 属性別検討では,出身地・居住年数・住宅形態・音楽を聴く頻度・車の運転・人込みへの意識において顕著に有意差が認められた。 5. 上記6項目に注目し,各街路の平均因子得点差を外的基準として数量化I類による分析を試みた結果,活動性では出身地および居住年数に続いて運転の有無による影響が大きく,親密性では車の運転の有無および人込みへの意識が大きく影響している傾向が捉えられた。この事実に着目し,次年度研究では人・車の評価ウェイトの違いを個人差として明らかにする計画である。
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