研究概要 |
本報告は,空間イメージ形成における人的要因の影響に関する研究の一環をなすものであり,被験者の日常的音環境が,空間イメージを形成する音評価にいかに影響するかを捉えることを目的とする。具体的には,空間における視覚的音源としての“人間"および“走行車両"の存在が,被験者の日常的音環境によって培われた潜在的音をいかに想起させ,空間イメージの形成に影響を及ぼすかを明らかにしようとするものである。 2つの側面から心理実験を試みた結果,得られた知見は以下に要約される。 1.想起音と街路空間イメージの相関分析 (1)空間における音源の有無によるイメージ変化量は,想起音イメージの“喧騒"因子と最も大きくかかわる。 (2)街路空間イメージの形成に影響を及ぼす人的要因として,出身地・居住年数・住宅形態・音楽聴取の程度・車の運転頻度および人込みへの意識度を特定することができた。 2.空間評価構造における個人差と居住歴 (1)実験対象街路の熟知度が,空間評価構造におけるディメンジョン数の増加あるいは評価構造の複雑化として反映する事実が捉えられた。 (2)評価の寄与率が高いディメンジョン1に注目し,Visual-WeightとSound-Weightのプロット図を求めた結果,評価パターンは〈視覚優先〉〈想起音優先〉〈視聴覚融合〉の3つに分類された。 (3)居住歴に伴う街路の熟知度・車の運転頻度・音楽聴取の程度・人込みの意識度などの日常的音環境との関連において,前述視覚・聴覚の優先性を確認することができた。
|