研究概要 |
茶には製造工程や品種の違いにより風味の異なる製品が多種ある。緑茶、ウーロン茶、紅茶の中より各3種、計9種類を研究試料として用い、センサーは半導体ガスセンサー5種類を使用し、本年度はまず実験方法の確立を目ざした。飲用時に感じられる茶香気の違いをどこまでセンサーが識別可能かを調べることにし、茶葉のヘッドスペースガス中の香気を効率よくセンサーに導く方法を検討した。ガスセンサーは、水蒸気があると過敏に反応してしまうため、食品に広く応用するためにもまず水蒸気を除去する前処理法を確立した。茶のヘッドスペースガスをポーラスポリマー樹脂に通し、香気成分を一度樹脂に吸着させた後、熱脱着してセンサー部に送り込むシステムを再現性を考慮し、できるだけ自動化するよう組み立てた。5種のセンサー応答は増幅器で増幅し5種のレコーダーで記録した。高さをセンサー応答とし、絶対数に換算した後、変数として多変量解析に供した。クラスター分析を行ったところ、茶粉末、茶浸出液いずれにおいても、緑茶、ウーロン茶、紅茶は完全にグループ分けされ、グループ間では、緑茶とウーロン茶が近く紅茶が離れる結果となった。一方、9種の製茶について、センサーと同様の前処理をした後、香気成分の化学的分析をGC,GC-MSを用いて行った。同定された29成分のGCのピーク面積を変数として、同様にクラスター分析を行った結果、やはり各製茶は完全にグループ分けされグループ間の距離もセンサーの結果とよく対応していた。このことは、人間の化学感覚による識別をセンサーに代替させる可能性を示唆するものである。 現在、センサー応答を直接パソコンに導入するシステムも順調に動き始めたので今後さらにデータを集積する予定である。
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