研究概要 |
本研究は、生体におけるレセプターと脳を単純にモデル化した半導体ガスセンサーシステムを用いた分析と、スペクトルによる科学的分析結果を融合し人間の化学感覚について新しい視点から再検討し基礎的データを得ることを目的として昨年度から継続研究を行なったものである。本年度の主目的は、当研究費で購入したパソコンにセンサーのデータを直接取り込み、波形のデジタル化自動システムを完成させ、将来に向けての汎用化を図ることである。資料は昨年度の茶に代わり、大豆を用いた。大豆は茶に比べると香気は弱いが、特有の豆臭は時として異臭となり食品として無視できないものである。弱い香気に対するセンサーの適用範囲を検討する意義も含め、標準大豆の他に、豆臭が弱い品種として開発されたリボキシゲナーゼの2種のアイソザイムL-2,3欠失およびL-1,2,3欠失(全欠)大豆から呉汁(豆乳原料)を調製し、これらに対する上述の自動化センサーシステムを確立した。本年度はセンサーの数を1種増やし、よりデータの多次元化を行なった。ガスセンサーの応答を6次元データと考え、各資料について10回ずつ測定を行ないその結果を統計処理した。クラスタ分析の結果、[L-2,3欠大豆、全欠大豆]、[標準大豆]の2つの大きなクラスタが形成され、さらにL-2,3欠大豆と全欠大豆は2つのクラスタに分かれた。センサーに感知された香気とほぼ同様のもの(呉汁ヘッドスペースガス)とガスクロマトグラフィー、マススペクトロメトリーを用いて化学分析をした結果、豆乳を飲用した際強く感じられると思われる低沸点化合物のほとんどがリポキシゲナーゼ欠失大豆では標準大豆よりも有意に減少し、センサーの結果をよく支持した。従って本研究で用いたセンサーは弱い香気に対しても有用で、人間の鼻と同様に大豆の香気識別がなされ、本研究の目的に適合することが示唆された。
|