平成5年度の生活実態調査の結果から、現代人の生活リズムが不規則で、夜更かし、短眠型になってきている現状がわかった。これを踏まえて、睡眠時間が日常生活に及ぼす影響を検討するために、生活リズムの乱れの典型的な状態である断眠実験をおこない、その前後の生活行動や、睡眠の内容・パターンの変化と回復の経過を観察記録した。実験は3夜の基準夜記録後、1夜断眠し、続けて3夜の回復夜の記録をおこない連続7夜を1セット(1被験者分)とし、9名の被験者についておこなった。結果の概要はつぎのとおりである。 1.睡眠に及ぼす影響 (1)全睡眠時間は、9名中8名において断眠直後の第1回復夜が最も長く、基準夜3夜よりも、回復夜3夜の睡眠時間が長くなっていた。(2)睡眠の質については、断眠後の睡眠において、基準夜よりも徐波睡眠もREM睡眠も増加するタイプが1名、徐波睡眠のみが増えるタイプが3名、REM睡眠が増加するタイプが3名、どちらも減少するタイプが2名であった。(3)寝つきの良さを示す、入眠潜時は9名中6名に短縮がみられ、2名はかえって延長し、1名は変化がみられなかった。(4)睡眠中の体動は、断眠後の第1回復夜が最も睡眠時間が長くなるにもかかわらず、最も少なくなった。 2.生活行動への影響 (1)朝の心身状況についての主観的評価は、断眠後最も低くなるが、回復夜睡眠ごとに評価は良くなり、9名中、5名は基準夜3夜の評価より、回復夜3夜の評価が良くなり、断眠による疲労は回復したと考えられるが、4名は3夜後も回復しなかった。(2)断眠による疲労を脳波やフリッカー値等による客観的測定方法で検討したところ、断眠直後に疲労が現れるタイプが5名、回復第1夜後に現れるタイプが4名であった。
|