現代社会におけるストレスや疲労の蓄積の実態を把握し、それらを解消する重要な手がかりや指標ともなる睡眠や生活行動について研究を進め、健康な暮らしの実現をはかる一助としたいと考えた。そこで研究計画に従い、1993年は現代人の睡眠と生活に関する実態調査、1994年は一夜断眠により生活リズムを乱した時の心身への影響を分析する実験を行った。そして1995年は効果的な睡眠を得るための睡眠環境と生活行動を検討したいと考え、応用実験と学生7名の睡眠日誌の分析を行った。研究の成果の概要はつぎのとおりである。 1.睡眠調査の結果(1)1982年と1993年の調査の比較から、現代人は睡眠時間が短縮し、夜更かしの朝寝坊タイプが増加していた。(2)女性の社会進出により生活リズムの性差は少ないが、女性の方がやや睡眠時間は短く不満を感じていた。(3)精神的疲労が睡眠の質を低下させていた。(4)高齢者介護の担当者の疲労や睡眠に関する不満は大きく、特に介護者の高齢化とともに夜間の介護負担と自分の中途覚醒が夜間睡眠を妨げていた。2.断眠実験の結果(1)一夜断眠後の睡眠は質も量も最も良くなる傾向が認められたが、被験者9名中2名は寝つきが悪くなり睡眠も浅くなった。(2)断眠の疲労は断眠直後に現れるタイプが5名、一夜睡眠後に現れるタイプが4名であった。(3)断眠の疲労は3夜後に回復した被験者が5名、3夜後も疲労が残っていた者が4名であった。3.睡眠環境と生活行動(1)睡眠評価が最も良くなった環境温度は20〜24℃で、30℃以上になると著しく低下した。(2)騒音や香りが睡眠や覚醒レベルに与える影響は個人差や慣れの違いが大きかった。(3)入浴は入眠前1〜3時間前が寝つきに効果的であった。(4)学生の場合、日中の活動量が少ない方が睡眠評価は良かった。(5)コーヒーは確実に覚醒レベルを高め、アルコールは覚醒レベルを低下させた。(6)精神的疲労、特に心配事が睡眠評価を低下させた。
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