新しい衣料用天然繊維の創出と森林資源保全の為の木材代替素材の開発を目的として、我々の身近にありながら従来全く利用されていなかった植物の処理方法を、短繊維織物用の紡績糸とレ-ヨン・アセテート用及び製紙用のパルプに分けて検討した。 まず、紡績糸については、素材としてキュウリその他のウリ類、エンドウ、カラスノエンドウ、小豆などのマメ類、チュウリップやアヤメなどを選んで、それらの枯れ茎をアルカリによって精練した後、さらにペクチナーゼ系の酵素によって処理し、繊維を得た。これらを得られた各種の繊維を緯糸に、木綿糸を経糸として平織布を試織し、それぞれに特徴のある織物を得た。 次に、パルプについては、まず600種類前後の草本類をリストアップし、これらの中から身近な植物類の処理を試みた。すなわち、常法としてのアルカリによる処理を行った他、近年、要望の多い灰汁による処理または薬品を使用せず叩解のみによる処理についても検討を行って、それぞれに適した素材の種類と方法を比較考察した。さらに、得られた各種のパルプを精製し、ビスコース法による溶解を試み、これらのパルプがレ-ヨンやテンセルなどの再生繊維としても、また、ウレタンに代わるセルローススポンジとしても使用出来ることを知った。次いで、無水酢酸によってアセチル化することを試み、アセテートが疎水性の大きなパルプとして或いは雑草紙の加工処理用として各種の用途が期待されることを知った。製紙については、各種の素材からのパルプを使用して、手漉きと機械漉きを試みたが、現在迄に実用化が進渉し、身近な未利用素材と故紙から得られた紙のみによる著書を出版することを得た。
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