研究概要 |
平成5年度中に、紙や布のような多孔性物質の半径方向への液体浸透過渡現象測定装置の試作を終え、平成6年度はこの装置にいくつかの改良を加え、連続的に液体を補給しながら半径方向への浸透特性を解析した。 ろ紙(Advantec,no.2,半径5mm)に対する1秒以下の水の過渡浸透速度は、水の接する面の粗さに支配され、粗面の方が平滑面より大きい。水の補給孔の直径と、浸透速度の関係を検討し、適当な直径として3mmとした。細孔の直径が大きいほど過渡期の浸透速度が大きく、速く平衡浸透量に達する。 紙への液滴の半径方向の浸透の動力学にたいして、D'Arcyの法則と連続の式から、浸透面積Aと時間tの関係について次式が導かれている(Kissa、1981)。 A=Kt^n ここで、kは紙や液体の性質に関する定数である。そこで、実験結果について、Aとtの関係を両対数プロットすると、3つの異なる勾配(n)をもつ直線からなることがわかった。 まず、0.5秒以下の過渡期の浸透は、時間依存性が大きく、n=1.8前後であった。続いて、n=0.9の領域であり、この値はMarmur(1992)の定常状態(液体の補給が無限)でのnと一致する。さらに、n=0.3の領域が続く。この値は、Marmur(液体の補給を停止)やKissa(1981、液滴)の得た値と一致するが、本結果の場合試料サイズが有限であるため、試料境界に近づいて浸透速度が減速するために生じたものである。
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