研究概要 |
住居における温熱環境要素の居住者(特に高齢者)への影響および生活の中での対応を捉え,居住者にとってより好ましい温熱環境を提案するために,アンケート調査,実態測定,人工気候室実験を行った。 1.住居内の温熱環境と生活に関するアンケート調査を青年・中年・高齢者の各年代毎に約120〜220名について行った。その結果(1)高齢になる程エアーコンディショナーの利用は減少するが,扇風機の利用は増加し,これには暑さに対する感覚や体格が関わっている。(2)睡眠中のトイレの回数や目覚める割合が高齢になる程増加し,トイレの位置に配慮すべきである。(3)加齢とともに着衣の枚数や夜間の寝間着以外の着衣が増え,温度に対する防御行動が認められることから,夜間の寝室の温度管理に注意を払うべきであることなどを明らかにした。 2.住居室内の温熱環境の実態を把握し,居住者(特に高齢者)への影響を検討するために,住宅の温熱環境の実測調査を行った。その結果(1)夏季の高齢者の在室時の居間の平均気温は29℃を越え,冬季には居間で18℃以下,寝室で14℃以下となる。(2)夏季の皮膚温は約34℃で比較的安定するが,冬季にはかなり厚着にも関わらず,末梢部の皮膚温が低下し,室温の影響が窺える。(3)冬季の睡眠時の皮膚温は34℃以上にあることから電気毛布を高温で使用している。トイレ時の皮膚温がかなり低下することを明らかにした。また,老人ホームでの居室の温熱環境と居住者の影響を実測した結果,夏季では22〜27℃,冬季には18〜23℃にあり,戸建て住宅に比べ,良好に維持されてはいるが,居室の位置で平均室温に約2℃の差があり,トイレでの皮膚温の低下が確認された。 3.高齢者の温熱的快適範囲を検討するために人工気候室実験を行った。その結果(1)夏期には,気温・気流を変化させ,高齢者への影響を測定し,気温が低く,気流が早い程皮膚温は低下し,温冷感は寒い側にあること。高齢者の快適範囲は青年に比べ高温側にあることを明らかにした。(2)冬期には,放射暖房と床暖房の効果の違いに関する同様の実験ついて実験を行い,高齢者の快適範囲は24℃付近にあることを明らかにした。
|