研究概要 |
<目的>従来の家庭科教育における歴史研究は,ともすれば学習指導要領の各年版の解説や教科書や指導書の歴史を叙述したものが主流で,教育実践が依拠した教科理論や子どもにつけようとした学力,それを保障する具体的な教材,その授業の方法など,教授学の立場からのアプローチはそう多くはない。そこで,男女平等教育の視点で,戦後の家庭科教育実践の授業を分析し,不足していた点を明確にする。また,家庭科教育学研究の先達に当時の研究・授業実践の状況を聴取することにより,今後の家庭科教育の実践課題を明らかにする。 <方法>1946年度から93年度までの47年間に公刊された月刊雑誌等に収録された家庭科教育の実践を,授業記録を教授学でいう「授業を構成する4つのレベル(教育内容,教材,教授行為,学習者)」に対応して抽出,分析した。さらに,実践・研究者への意見聴取を実施した。 <結果>まず,抽出された授業実践記録は小学校,中学校,高等学校合わせて4,406事例であった。1940年代は21例,1950年代511例,1960年代625例,1970年代1,105例,1980年代1,526例,1990〜93年617例であった。領域別×年代別でみると,被服領域の減少,食物,家族関係,保育,住居領域の増加がみられた。教材の編成枠組みをみると,「教科書準拠」は42.2%,「独自教材による自主編成」は26.4%であった。特に1980年代以降は逆転し,29.7%,36.0%であった。教師の研究態度も1980年代には「開発追求型」が57.4%と多い。授業後の子どもの変容の客観化は,全体の18.6%が評価基準が明確にされていた。 さらに,実践・研究者への意見聴取を実施した結果,今後は児童福祉・高齢者福祉など生活福祉の問題を中心にすえた教科の教育内容研究が必要なことがわかった。
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