水道水を塩素処理した場合、トリハロメタンを含む多くの有機塩素系化合物が生成する。それらの中で難揮発性で強力な変異原物質である3-chloro-4-(dichloromethyl)5-hydroxy-2(5H)-furanone〔MX〕に注目して、その分解性を物理的、科学的、生物学的手法により検討した。その結果、MXを100°C、30分間加熱すると変異活性が消失すること、水溶液のphが6以上に上昇すると、変異活性が低下すること、SH基を分子内に有するシステインやグルタチオンを共存させると変異活性が瞬時に消失することを明らかにした。さらに、ラット肝ホモジネートや血清と接触させた場合に著しい変異活性の低下を観察した。各反応液について、UV吸収スペクトルおよび高速液体クロマトグラムの経時変化を検討したところ、MXが減少、または消失し、分解物や新たな縮合物が生成することを確認した。一方、MXの前駆体を明らかにする目的で20種の有機化合物を次亜塩素酸ナトリウムあるいは塩素水で塩素処理し、GC-MS法およびGC-LC法で検討したところ、フミン酸、フルボ酸の他、チロシン、クロロフイル、レシチンからMXが生成することを見い出した。 現在、ラットにMXを投与した場合の各臓器中での経時変化等について検討している。
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