研究概要 |
ホタテガイ貝柱(閉殻筋)の合成エキス中には,苦味アミノ酸といわれているアルギニン(Arg)が閥値を大幅に超える濃度で含まれているにもかかわらず,そのエキスはほとんど苦味を呈さない.これはエキス成分中にArgの苦味を抑制する成分が存在することによると考え,有効成分の同定を試みた.また,ホタテガイよりはるかにArg含量が高いイセエビ筋肉についても同様の研究を行った.得られた成果を要約すると次のとおりである. 1.まず,ホタテガイに含まれる濃度とほぼ同じ濃度のArg溶液(300mg/100ml)の味質を調べ,甘味を伴う強い苦味を呈することを確かめた.また,その濃度が低くなると苦味に比べて甘味が強くなり,濃度により味質が変ることが分った. 2.ホタテガイの呈味に重要とされている8成分よりなる合成エキスを用いてオミッションテストを行い,Argが苦味を与えないことを確かめた. 3.Argへの他成分の添加および他成分へのArg添加の2種類のアディションテストを行った結果,Argの苦味抑制にグルタミン酸,AMPおよびNaClが有効であり,なかでもNaClの効果が最も大きいことが判明した. 4.イセエビの遊離アミノ酸,核酸関連化合物,無機成分などのエキス成分の分析結果に基づいて,1.5g/100mlのArg溶液へのタウリン,グルタミン酸,グルタミン,グリシン,アデニンヌクレオチド(ATP+ADP+AMP+IMP),NaClのアディションテストを行った結果,グリシン,アデニンヌクレオチド,NaClにArgの苦味抑制効果が認められた.このうち,NaClの効果は特に顕著であり,ホタテガイの場合と同様の結果がイセエビにおいても得られた.
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