【目 的】高血圧の栄養学的要因として、食塩の絶対量よりNa/K比が重要であると指摘し、これまでにヒトを対象に食塩摂取量を同一にして高K食の影響を検討し、血圧のみでなく脂質代謝の改善をみとめた。また若年者を対象としたMg負荷により、catecholamineの抑制を介した降圧機序が示唆されたが、ヒトではまだ報告をみないので、本研究でMgの影響を重ねて検討した。 【方 法】研究I:若年健常者を対象に二重盲検交差法により食事管理下でMg(OH)_2剤とPlacebo剤を各10日間経口摂取させ、各期の比較を行った。研究IIでは、軽症高血圧をふくむ中高年者を対象に1ヵ月間、研究Iと同じくMg剤の負荷を行い(Mg群)、負荷前後の変動をPlacebo群と比較した。 【結 果】血圧への影響:研究Iでは、尿中Norepinephrine排泄量(U-NE)はPlacebo期に比してMg期で12%低下した。Mg期の開始日から最終日への尿中Mg排泄量変化率とU-NE変化率に負の相関が認められた。尿中Mg排泄量変化率が2倍以上の群では、Placebo期に比してMg期でU-NEの有意な低下を認め、U-NEの抑制を介した収縮期・拡張期血圧の有意な低下が認められた。研究IIでは、Mg群で収縮期・拡張期血圧の有意な低下が認められた。尿中Na・Aldosterone排泄量、Hematocritの有意な増加が認められ、Na利尿による降圧機序が示唆された。またU-NE変化率と拡張期血圧変化率に有意な正相関が認められ、U-NE変化率と尿中K/Mg比・K排泄量変化率との間に有意な正相関が認められた。 血清脂質への影響:研究IではMg負荷により、LCATの有意な増加を認めたが、血清脂質に有意な差は認めなかった。研究IIでもLCATの有意な増加を認め、HDL-cholesterol、apo-AIは有意に増加した。 【まとめ】研究I・研究IIともにMg排泄量とU-NEには負の関連が認められ、Mgによる降圧作用が示唆され、Mg感受性に個人差のあることも考えられた。KとMgでは降圧機序の異なることが示唆され、K/Mg比につて検討する必要性が示唆された。Mg負荷によりLCATは活性化され、脂質代謝が改善されることは間違いないようである。
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