A.正常および糖尿病ラット個体における腹部末梢血流量と呼吸数に対する各種辛味成分の嗅覚および味覚刺激効果の比較。 正常ラット(n=9)として、7〜11週齢のWistar系を、糖尿病ラット(n=10)として、WBN/Kobを使用した。レーザー血流計により、腹部末梢血流量と呼吸数を測定、使用した香辛料辛味成分は、ピペリン(コショウ)、カプサイシン(トウガラシ)、ジアリルジサルファイド(ニンニク) (括弧内は植物名)。実験はエーテル麻酔下で、まず嗅覚刺激実験から行い、その後約1時間放置し、覚醒後再びエーテル麻酔を行い、味覚刺激実験を実施した。両実験は最も低い濃度の10^<-8>Mから順に10^<-4>Mまで使用し、測定時間は嗅覚実験では各濃度2分30秒間、味覚実験では3分間とした。 1.嗅覚刺激実験:正常ラットにおいては、何れの辛味成分に対しても、呼吸数と血流量は有意に変化しなかったが、糖尿病ラットにおいてはやや増加の傾向があった。 2味覚刺激実験:正常ラットにおいては、全ての辛味成分の種々の濃度に対して呼吸数はやや増加の傾向を示した。しかし、糖尿病ラットにおいては、嗅覚実験とは逆に呼吸数は有意に減少した。一方、血流量に関しては、正常ラットでは何れの成分の何れの濃度に対しても有意に変化しなかったが、糖尿病ラットにおいては呼吸数の場合と同様にやや減少した。使用した三辛味成分間の作用の差は殆どみられなかった。 B.ラット摘出心室頭筋の収縮張力に対するカプサイシンの抑制作用。 ラットの場合、モルモットと異なり、低濃度カプサイシンによる張力増強はみられず、使用した全ての濃度(10^<-9>M〜10^<-4>Mで抑制した。細胞内Ca貯留系に対する影響をRested-state contractionを測定して調べたが、同系には殆ど影響を与えていず、張力抑制はCaチャネル抑制のよるものと結論した。
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