近年、通信販売市場の伸びは著しいものがあるが、本研究の目的は通信販売、特に、衣料品の通信販売の利用実態を明らかにするとともに、衣生活における通信販売の役割、衣料品通販の消費者問題、通信販売伸長の要因などの検討である。本目的のために、1993年〜1994年に(1)消費者を対象とした「衣料品の通信販売に関する調査」、(2)通信販売業者を対象とした「衣料品の通信販売業に関する調査」、(3)岐阜県のアパレル業者を対象とした「通信販売業と岐阜アパレルとの関係に関する調査」および「カタログ比較調査」を実施した。 これらの調査から、通信販売の利用は女性を中心に定着しているが、男性の利用率は低く男女差がきわめて大きいこと、一般に、通信販売の利用動機は商品の品質より、利便性、情報性、低価格にあること、ファッション性が要求される衣料品は特に情報性の役割は大きいこと、衣料品は通信販売による購入商品のうち最も利用率の高い商品であるが、30歳代が最も利用経験率が高く、未婚者より既婚者で、未就学児がいない世帯より未就学児がいる世帯で、非共働き世帯より共働き世帯で、無職より常勤で、利用経験率が高いことなどが明らかとなった。衣料品通販の消費者問題としてはカタログにおけるサイズ表示問題、取扱絵表示、原産国表示、デメリット表示の不足、写真と実物との「ずれ」の問題、さらに通販に欠かせない返品・交換制度の問題などが挙げられる。通信販売業と岐阜アパレル業との関係は、円高の下、コスト高を背景としたアパレルの海外生産の進行、不況下での低価格志向という今日の状況下で、通信販売業に主導権があり、価格訴求が縫製業者へのしわよせ、ひいては品質低下を招きかねないことなどが明らかとなった。 マルチメディア化が推進されるなか、通信販売の一層の伸長が予想されるが、通信販売に関する消費者教育の充実が望まれる。
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