研究概要 |
各種食品に含まれるトリプシン・インヒビターの不活性化をアミノ-カルボニル(A-C)反応を用いて低減化する試みとして、本年度は、鶏卵白の主要トリプシン・インヒビターであるオボムコイドと大豆のトリプシン・インヒビター(STI)を用いてトリプシン阻害活性の抑制を試み、次のような成果を得た。 1.ニワトリのオボムコイド(C-OM)の阻害部位はアルギニン残基、ウズラのオボムコイド(Q-OM)の阻害活性部位はリジン残基である。そこで糖とオボムコイドの混合乾燥粉末を50℃,65%の相対湿度のもとで一定期間貯蔵して、各貯蔵期間によるリジンおよびアルギニン残基の損傷量を化学的に測定し、C-OMおよびQ-OMのトリプシン阻害活性の変化と比較検討した。Q-OMのトリプシン阻害活性はグルコースとの短時間の貯蔵により急激に低下し、その変化は遊離アミノ基の減少傾向とよく対応した。一方、C-OMのトリプシン阻害活性の低下はQ-OMよりも著しく遅れ、10日貯蔵後も50%以上残存した。糖の種類る反応性を比較すると、ガラクトースの場合にはグルコース同様、C-OMの阻害活性低下が著しく、マルトース系では阻害活性の低下が全く認められなかった。このように、適当な糖、あるいは反応条件を選ぶことにより、リジン型およびアルギニン型、いずれのトリプシン・インヒビターもA-C反応により不活性化できることが明らかとなった。 アルギニン残基が阻害活性部位であるSTIとグルコース混合乾燥粉末を上記同様に貯蔵し、A-C反応生成物を得た。1日貯蔵したSTI-gluの遊離アミノ基は約50%に減少、貯蔵15日で約10%に減少した。STI-gluの阻害活性は貯蔵2日目から減少し始め、貯蔵15日になるとその阻害活性は約60%に減少した。この傾向は遊離アルギニン残基の減少傾向とよく一致した。また、加熱処理を施すことによって阻害活性を更に低下させ得た。
|