研究概要 |
1,日本の環境管理方法論と技術 日本の環境政策と技術の関わりを考える視点として、環境基準、排出基準の決め方がどのような「環境技術」を誘導するのか、を分析した。日本型の「望ましい環境基準」に準拠した決定と、「技術的に可能な水準」に準拠した諸外国の決定の違いを念頭に置き、誘導された「環境技術」は「末端処理技術」だったのかそれともCP(Cleaner Production)技術だったのかを考察した。その際大企業と中小企業の条件の違いに注目することが、今後の発展途上国への技術移転を考察する上でも重要であると指摘した。 2,自然-人間関連史と科学・技術史 文明史のレベルで環境問題を考察する際の基本的視点を得るため、メソポタミアと日本の縄文との比較、中世以降のヨーロッパと日本の比較を通して、自然と人間の関わりの変遷を概説した。この作業は今後二つの発展方向を持っている。一つは科学・技術史の記述方法をめぐる問題であり、もつ一つは、大学の授業における「文明と環境」教育の可能性をめぐる問題である。後者については実践を踏まえた検討を行う予定である。 3,環境管理方法論と科学 学問の論理と環境計画論の論理と行政の論理の3者の相互関連に着目し、かつ時間系列では、個別事象の環境基準に基づく規制主義から、社会的な側面も踏まえ総合的な環境管理をめざす方向への変化に着目し、表記テーマに迫ろうとしている。その際、「環境容量論」、「生物モニタリング」等いくつかのキー概念に注目し考察を進めたい。 全体として科学・技術史が自然と人間の関わり方をめぐる「転換」にどのように寄与できるか、という視点を堅持したい。
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