1 分野形成について、パラダイム論以後の学問分野史をあつかう諸アプローチおよび、分野形成の比較に関するいくつかの問題点を検討した。 2 世紀交代期に先立つ時期に生じた、学問分野の変化とその知的制度的文脈を特徴ずけた。それの上で、ポッゲンドルフなど科学論文集のカタログや学者の名簿を調査し、世紀交代期1880〜1910前後における物理諸科学の学問地図と、そこに見られる新分野の反映や各国の特質などの巨視的比較を行い、あわせて明治後期の日本の物理諸科学についても比較を試みた。 3 天体物理学の形成を例に、分野形成にかかる知的制度的な文脈を整理検討した。とくに、当時の天文学における精密測定や数学への知的制度的強調のもつ歴史性に注目しつつ、イギリスの場合についての議論を再検討した。それと比較しつつ、地球物理学や日本における同時代の、明治後期の天文学の活動を中心に検討した。 4 19世紀後半の物理科学の立ち上がりは、大学の研究教育の場としての物理実験室の出現と精密測定などの強調は当時の西欧でのに、そうした日本における物理科学、地球物理学の分野形成の代表的人物の一人であり、初期の実地観測の教育にも大きな役割を果たした田中舘愛橘にみられる実験科学の精密科学的手法としての誤差論の利用について検討し分野形成におけるその意義を論じた。
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