1.漢訳西学書所在目録作成 (1)中国でプロテスタント宣教師により著訳述された漢訳西学書の和刻本については、刊行年や出版回数など出版事項が不明なものが多い。研究当初は多くの実物にあたり、これらの事項を知るに役立つ痕跡を得ようとした。しかし調査を重ねるにつれ、同一内容の書であっても、実際には多くの異なる版が作成されていることを知り、これら版種別まで考慮した所在目録の作成こそ優先すべきとの認識に至った。試みとして210点の図書を対象とした「清末期(1800年代)漢訳西学書および日本版の所在目録(稿)」(A4、15頁)を作成し、平成7年3月の化学古典研究会(東大駒場)で配布したが、公表にはもう少し時間が必要である。 (2)『航海金針』の版種調査。航海気象学の和刻本『航海金針』については徹底調査をおこない、平成6年度のうちに、国内公共的機関所蔵の対査作業を終えることができた。調査点数は過去の調査も含め39に及んだ。この結果『航海金針』には4種の異植字本の存在を確認し、また安政3年の刊記をもつ刊本を発見し、初版は安政3年に刊行された可能性が高いとの結論に達した。通説の安政4年は残存数が最も多い第3番目の版種の刊行年であると考えている。この内容は平成7年6月の日本科学史学会で発表する予定。 2.漢訳西学書の原形復元のための資料収集。研究計画にあげた『中外新報』のうち、第12号は西尾市立図書館岩瀬文庫で写本を確認し複写収集した。金沢市立図書館蒼龍館文庫では第10〜12号の抄録の存在を確認した。 3.欧語新聞・雑誌の調査。横浜開港資料館所蔵のThe China Mail(Hong Kong)を調査し、D.J.Macgowanが訪欧の途中で寄港したときの香港資料を複写収集した。
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